かつて「日本人メジャーリーガーの聖地」とまで呼ばれたニューヨーク・ヤンキース。しかし近年、そのブランドは確実に陰りを見せている。かつてイチロー、松井秀喜、田中将大らが在籍し、日本でも絶大な人気を誇った名門球団が、なぜ今「日本人離れ」を起こしているのか——。米メディアはその背景に、チーム体質やファン文化の変化、さらにはメディア環境の違いを挙げている。
村上宗隆（東京ヤクルトスワローズ）がメジャー挑戦を視野に入れているとされる中、ヤンキースも獲得候補に挙げられている。しかし、報道によれば「ヤンキースはもはや日本人スターが憧れる球団ではない」という厳しい指摘がなされている。契約金は最大で302億円規模になる可能性があり、争奪戦は熾烈を極める見通しだが、その一方で多くの日本人選手が“ヤンキース以外”の道を選んでいるという。
この背景には、ニューヨークという街の特有のプレッシャーと、ヤンキースファンの容赦ない批判文化がある。結果を出せば英雄、だが不振になれば即バッシング。日本の温かい応援スタイルとは異なり、SNS時代の現在では批判が一瞬で拡散する。この環境を敬遠する選手も増えているのだ。また、近年のヤンキースはタイトルから遠ざかっており、「勝てる球団」というイメージも薄れつつある。
一方で、ロサンゼルス・ドジャースやシアトル・マリナーズといったチームは、より選手に寄り添う環境や日本文化への理解度の高さをアピール。大谷翔平や鈴木誠也といったスターがこうした球団を選んだことで、若手選手の憧れもそちらにシフトしている。ヤンキースが持つ伝統的な「帝国」的イメージは、もはや若い世代にとっては重圧でしかないのかもしれない。
米メディアは「村上がニューヨークを避ける可能性は十分にある」と指摘し、むしろ西海岸のチームが彼のスタイルに合っていると分析している。日本人メジャーリーガーの“価値観の変化”が、MLBの構図そのものを変えつつあるのだ。ヤンキースが再び日本人スターの心をつかむには、かつての栄光ではなく、現代の選手に寄り添う新たな姿勢が求められている。
「憧れ」から「距離」へ——。時代の流れとともに変化する選手の意識は、野球というスポーツの国際化の中で、避けられない現実を映し出している。
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